アヒルと鴨のコインロッカー-野蒜海岸、ロケ地観光ガイド-1
マップポイントno.074:野蒜海岸

奇妙な隣人、河崎(瑛太)が車で向かった先は太平洋を望む白浜の静かな「野蒜海岸」で。。。
家畜として飼いならされ改良された「飛べなくなった鴨」のことをアヒル(家鴨)と呼びます。つまり鴨とアヒルはどちらもカモ科の水鳥であり、大きな違いは餌を自分でみつけて育ったものか、人に与えられて育ったものかというだけで、もとは同じ生き物なのです(ちなみにこのアヒルと鴨の交配に寄って生まれた雑種を合鴨(アイガモ)と呼びます)。「アヒルと鴨のコインロッカー」のタイトルにも含まれるこの二種の動物の違いについて、物語でははっきりとした答えとしては語られませんが、そんなアヒルと鴨が登場人物を示すキーワードとして登場します。
同名小説が原作である本作は原作同様、舞台の地を宮城県仙台市とし、そのロケ地についても仙台とその近郊にて撮影されましたが、ご当地映画としてのくくりではないため、「杜(もり)の都」仙台らしいケヤキ並木の通りも、青葉城の伊達政宗像も出てきません。が、大学入学のために引っ越して来た主人公がアパートの隣人と関わりを持つ場所としては都会過ぎず、田舎ではないこの仙台という地はごく自然な場所であり、何よりも重要な舞台となる県道沿いの小さな本屋も人気の無い松の林のある海岸も、原作小説がそれぞれ仙台の空気を身にまとっているため、その映画のロケーションの場としての仙台は必然的といえます。
今回ロケ地のひとつとしてご紹介するのは物語後半に登場する野蒜(のびる)海岸です。日本三景である松島よりも(仙台からみて)奥の地であることから呼ばれる奥松島の一角を形成し、2.8kmの美しい弧を描く白砂青松の海岸で、県内有数の海水浴場として親しまれています。※白砂青松:はくしゃせいしょう・白い砂と青々とした松の連なり
物語にはまったく関係がありませんが、この野蒜海岸にはかつて日本の大きな歴史に関わった幻の港が存在します。幻の港「野蒜築港(のびるちっこう)」は野蒜海岸の一端である鳴瀬川の河口付近に、明治11年、明治政府による国際交流の窓口として河川や運河の整備から市街地の形成に至るまで東北最大の国家プロジェクトとして着工されたものです。長崎港、横浜港にも先んじて計画されたこの近代港は難工事を経て内港の完成に至りましたが明治17年の台風直撃により瞬く間に破壊され、計画中止、廃港となったのです。現在では赤煉瓦造りの橋台、突堤の一部などが築港跡として残るのみとなっています。
温暖な気候とおだやかな太平洋を望むロケーションから別称「東北の伊豆ともいわれる海岸美を誇るこの野蒜海岸は、野蒜築港により近代的な貿易港となったのならば映画「アヒルと鴨のコインロッカー」の舞台としては成立しなかった物語の結末に繋がる重要な場所として登場します
※次回 「アヒルと鴨のコインロッカー-本屋と貞山堀、ロケ地観光ガイド-2」に続く
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